社会課題の解決につながる行動を、企業・自治体と生活者を結ぶサービスにする。 モアクトは、無料でポイントを貯めるアプリという利用者側の顔と、企業等の参加促進・調査を支援する事業としての顔を持っています。
「1日5円」は、5 NORMのミッションを毎日達成できる場合の計算例です。全利用者への毎日の配信・付与や、同じ条件の継続を保証するものではありません。本記事では、2026年11月1日に確認した公式情報と、還元の持続性に関する編集部の考察を分けて整理します。
誰が何を得るのか。三者を結ぶ事業構造
モアクトは、社会に良い行動をミッションとして届け、生活者の参加をポイントで後押しします。使う側は無料ですが、事業としては、企業・自治体等に対するサービスにも目を向ける必要があります。
| 主体 | 担うこと | 得られる価値 |
|---|---|---|
| 企業・自治体・団体 | 伝えたい課題や取組みをミッション等で届ける | 認知・理解、参加・集客、行動変容の検証など |
| 株式会社モアクト | アプリとミッションの運営、達成審査、ポイント管理、施策支援など | 法人・自治体等に提供するサービスの事業機会 |
| 生活者 | ミッションを実践し、写真等で実施を報告する | NORMやギフト、取組みを知る機会 |
これは企業等と生活者をサービスでつなぐ、B2B2C型の構造と捉えると分かりやすくなります。自治体が参加する場合は、行政の施策を生活者へ届ける役割もあります。
広告経由の購入・申込みを中心とする一般的なポイントサイトとの違いは、購入前の認知や理解、日々の行動の変化も提供価値として扱う点です。ただし、両者の予算が完全に別物という意味ではありません。広告型ポイ活も、広告主のマーケティング活動の一部です。
収益源はどこか。売上1,500万円の開示から読めること
公表されているのは、提供サービスと一部の過去の売上
会社概要の事業内容は、メディア事業、コンサルティング事業、Webアプリケーションの企画・開発・運営です。法人向けにはESGに関する推進支援、認知・集客の促進、調査分析が示されています。
こうした施策・運営・調査等の提供を、法人・自治体等向けの事業として収益化する構造と読むことができます。ただし、今回確認した資料では、契約ごとの料金、課金単位、売上の内訳までは確認できませんでした。すべてのミッション提供団体が同じ掲載料を払う、と決め付けることはできません。
2026年5月26日の会社分割に関する開示では、分割対象事業の売上高は2026年3月期で1,500万円とされています。これは分社化前の対象事業の数字であり、2026年7月設立後の会社の通期売上や、現在の年商ではありません。
| 開示から分かること | この数字だけでは分からないこと |
|---|---|
| 2026年3月期の対象事業に1,500万円の売上があった | 黒字か赤字か、営業利益や資金繰り |
| 事業承継の対象と運営体制の変更 | ポイントの原価、企業案件ごとの利益率 |
| 関西電力100%子会社としての分社化方針 | 将来の追加出資額や還元予算 |
「赤字でポイントを配っている」「すでに自立採算で回っている」のどちらも、この売上だけでは結論を出せません。親会社の出資と、顧客からの売上も別のものです。
関西電力の適時開示:会社分割による子会社設立・分割対象事業の売上(PDF)
CSR予算だけが原資、と言い切らない
企業側の支出目的には、CSR・ESGの取組みを広げること、商品やサービスを知ってもらうこと、行動を調べることなどが考えられます。自治体には、住民の省エネ行動等を促す施策という文脈もあります。
ここから「企業等の施策費用が事業を支える」と考えるのは自然ですが、個々の5 NORMを誰が何割負担しているかは未確認です。顧客側の費用、運営側の利用促進費用、親会社からの資金などを一つの原資として混同しないことが大切です。
企業や自治体は、写真の何に価値を感じるのか
写真そのものより、行動につながる接点
写真はミッションを実施したことを判定する材料です。事業の価値を、写真1枚の売買価格に置き換えると分かりにくくなります。
例えば企業には、取組みを知らなかった人へ届き、実践するきっかけになったかを確かめる価値があります。関電の公式メディアは、クラダシとの取組みで、新しい顧客層との接点や、購入した人・しなかった人の行動の違いが見えてきたことを紹介しています。
「見た」「クリックした」だけで終わらず、理解や実践、その後の行動を検討する材料を得る。これがポイントを付けて参加を促す理由を考える手掛かりになります。ただし、その効果や費用対効果がすべての案件で同じとは限りません。
広島県では、省エネ・脱炭素の施策に活用
関西電力は2026年4月、広島県の「家庭における省エネ・脱炭素アクション推進業務」で最優秀提案者に選定されたと発表しました。県の結果公表でも選定を確認できます。
提案には、モアクトを使った行動の継続支援、地域企業等との連携、CO₂削減効果や行動変容の可視化が含まれています。商品広告だけでなく、住民参加と効果測定を支援する用途があることを示す具体例です。
この事例を、そのままモアクト社単体の売上額や、全国ユーザーのポイント原資に読み替えることはできません。公表時点の提案主体は関西電力です。
なぜ分社化したのか。公式理由は機動的な運営と事業拡大
2024年11月22日の公開実証開始から、2026年7月1日の新会社発足までは約1年7か月です。ただし、公式資料には、それ以前の2023年12月からの実証も記されています。公開開始日だけを起点にして、短期間で一気に作ったと判断するのは適切ではありません。
2026年5月の会社分割開示は、目的を機動的な運営体制の構築と事業拡大と説明しています。6月の事業開始発表も、実証を通じた継続参加・行動変容の有効性、企業等の参画ニーズ、運営の知見を踏まえた事業承継としています。
新会社は関西電力100%出資で、代表者は小山陽平氏です。「独立」という言い方をしても、関西電力グループを離れたという意味ではありません。
関西電力:会社分割の目的(PDF) / 関西電力:新会社設立・事業開始(PDF)
大阪・関西万博の機運や市場での差別化を事業環境として考察する余地はあります。しかし、今回の資料から「万博が分社化の期限だった」「競合に勝てないから急いだ」という因果関係までは確認できません。分社化の理由は、まず公表された説明に沿って理解します。
関電の非電力事業は、すべて囲い込みなのか
関西電力は、電気以外にもサービスを広げてきました。例えば、以下の事業が公式資料で紹介されています。
| 事業・サービスの例 | 公式に紹介されている内容 |
|---|---|
| ポンデテック/PC next | 使用済みパソコンの再生・販売 |
| かんでんPay | アプラスと提供するキャッシュレス決済 |
| ゲキダンイイノ | 低速の自動走行モビリティを使うサービス |
| ソコナラ | 地域の中小企業の中核人材採用を支援 |
関電公式メディア:ポンデテック・PC next / 関西電力:かんでんPayの提供開始 / 関西電力:ゲキダンイイノのサービス開始 / 関西電力:ソコナラの設立(PDF)
日常の接点を増やすことが、関係の継続や別の事業機会につながるという見方はできます。ただし、採用支援、再生PC、決済、行動変容支援を、すべて電気契約の乗換え防止だけで説明するのは無理があります。
関西電力は2026年4月のDX関連の発表でも、モアクトとポンデテックを、社会課題解決とビジネスを両立する取組みとして紹介しています。6月のモアクト設立発表は、既存のソリューションと新領域への挑戦を連携させる方針を示しています。
モアクトは関電との電気契約なしでも使え、公式FAQでは、はぴeポイント等との連携は現状できないとされています。関電の顧客接点を広げる可能性と、すでにポイント経済圏が一体化していることは別です。
「1日5円」はいつまで続くか。獲得と継続を分けて考える
5 NORMの価値と、毎日得られることは別
NORMは公式に1 NORM=1円相当と案内されています。しかし、5 NORMのミッションがあることと、全利用者が毎日それを達成できること、今後も同額が続くことは別です。
本記事では、毎日の5 NORM付与を独自に実測していません。グッドポーズ等の実施条件・回数・報酬・期限はアプリで確認してください。同じ還元がいつまで続くかを確約する公式案内は、今回確認した資料では見つかっていません。
モアクト公式:NORMの円相当表示の例 / モアクト公式:ミッションの参加・審査手順
毎日の報酬を、すべてCACとは呼ばない
以下は編集部の考察です。ポイントには、新規登録のきっかけをつくる役割と、継続して利用してもらう役割が考えられます。CACは顧客獲得単価であり、新規獲得にかけた費用を獲得数で割って見る指標です。毎日の既存利用者向け報酬は、継続利用・再訪を促す費用として捉える方が適切な場合があります。
日々の参加者がいることは、企業等が施策を届ける接点にもなります。その接点が顧客側の目的に役立てば、運営が参加を促すことには事業上の意味があります。ただし、モアクトの獲得単価、利用継続の目標、報酬予算、その費用対効果は確認できていません。
額面の試算だけで、赤字とは判断できない
仮に1万人が30日間、毎日5 NORMを獲得した場合、付与量は150万 NORM、円相当の額面では150万円です。これは条件を仮定した計算であり、実際の参加者数・配布量ではありません。
額面はそのまま運営の現金支出や会計上の費用額を示すわけでもありません。交換条件、実際の利用、審査・システム等の費用、顧客からの対価を含めて見なければ、継続可能かは判断できません。過去の売上1,500万円と、この仮定の月額を直接比べて赤字を推定することも避けます。
今後を見るなら、減額予想よりも事業の条件を見る
今後の展開は一方向ではありません。以下は公式の改定予告ではなく、継続性を考えるためのシナリオです。
| 考えられる方向 | 利用者が確認したいこと |
|---|---|
| 企業・自治体の案件が増え、現在の報酬を維持する | 参加できるテーマ・地域・期間が自分に合うか |
| 対象ミッションや報酬配分が変わる | 毎日の条件、回数、対象外、終了日 |
| 報酬額や特典方式が見直される | 全員付与か抽選か、手間に見合うか |
| 交換先や交換条件が変わる | 在庫、必要NORM、受取額、利用期限 |
事業が拡大しても、毎日の報酬が必ず増えるわけではありません。逆に、分社化したから減額が近いとも言えません。予算を使い切った日や目標会員数など、未公表の条件を作って将来を予測しないことが大切です。
見るべきなのは、企業等にとっての参加効果、継続的な発注や新規案件、運営と審査の効率、利用者が参加を続ける理由です。写真の数だけ増えても、顧客側の目的や利用者の納得につながらなければ、事業の価値は説明しにくくなります。
行動データの活用と、認証の評価も分けて考える
データを使う事業だからといって、提出写真をそのまま売っていると判断することはできません。公開されているプライバシーポリシーには、属性やミッション実施状況等を個人が識別されないよう統計化し、分析結果を提供する利用目的が記されています。
利用者が確認したいのは、収益の仕組みだけでなく、写真や履歴がどの目的で扱われるかです。納得できる範囲で参加し、不要な個人情報の写り込みを減らしましょう。
また、事業拡大や開発の速さから、パスキー等の認証機能への対応状況の理由を推定することはできません。「急いで作ったためセキュリティを後回しにした」という因果関係は未確認です。 認証の機能と課題は、モアクトのセキュリティ記事で別に評価しています。
結論:仕組みを理解し、還元を固定収入にしない
モアクトは、社会課題への参加を促す仕組みを、企業・自治体等へのサービスにつなげようとする事業です。提供サービス、自治体での採択例、過去の売上の公表から、事業としての輪郭は確認できます。
一方、個別ポイントの原資、現在の採算、毎日の還元が続く期限までは分かりません。事業目的が明確なことだけで、安全性や将来の報酬まで保証されるわけではありません。
- 生活のついでにできるミッションを選び、報酬のために支出を増やさない。
- NORMは使い道を決め、最低交換数と受取効率を確認してこまめに交換する。
- 報酬や対象条件が変わったら、手間との釣り合いを見直す。
- 提出する写真の範囲とアカウント管理も、特典とは別に確認する。
「1日5円がいつまで続くか」を当てにせず、今の条件で自分に合う範囲を使う。 ビジネスモデルを知る意味は、急いで参加する理由を探すことより、無理なく続ける判断軸を持つことにあります。
出典・確認範囲
確認日:2026年11月1日。公式の会社概要、適時開示、事業開始発表、自治体の選定結果、公式メディア、サービス案内を基に整理しました。内部の契約・費用内訳・未公表の収支は確認していません。毎日5 NORMの獲得を実測した記事でも、将来の改定予定を報じる記事でもありません。
売上高は2026年3月期の分割対象事業の数字です。各資料は公表時点の情報であり、現在の売上・利用者数と取り違えないでください。予算、利用促進、将来の方向性に関する分析は編集部の考察です。